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ローマ研究所

 

 ローマ研究所とは、722年にジョージ・ローワンによって設立された、健康に関する調査研究、医薬品及び医療機器等の開発などを行っている結晶技術研究機関である。ロンドン北部に所在しているものの、現所長を上海人である蒼生梁が務めているだけでなく、全体の7割が他島出身者で構成されているという、非常に多国籍な研究所となっている。施設は地上階が2階、地下階が1階までの3階建ての建物とされており、地下1階より上層の施設内では上記通りの研究が行われているが、実際には地下8階まで存在し、下層では異なる研究が公開されることなくなされている。以下に述べるのはローマ研究所の本質である。

 まず、研究所設立5年後に病死したこととなっているジョージ・ローワンが死亡したのは正しくは研究所が設立される2年前のことであり、彼の死亡後は半人ミュルミドのスクルドが彼に成り代わり計画を進めてきた。スクルドの目的は、地球の地球外ステーションからの独立であり、その足掛かりとして地上開発計画が立てられる。この計画自体はローマ研究所が設立される以前に立てられていたものであるが、750年になり、結晶技術の様々な分野において多くの功績をあげている研究者や学者らが各島より集められ、主任を蒼生梁とし、本格的にその計画を開始した。現在この計画は機密事項であり、各島の一部の星歌隊員らと研究員らのみが情報を共有している。また、地球外ステーションへの情報の漏洩を防ぐために、750年以降に加わった研究員らには地上開発計画の発端となる、地球の独立に関しては伝えられていない。

 地上開発計画は、地上へ降下するための技術の開発、地上での拠点の設立、先住民たるミュルミドの駆逐とエリクスの回収を目的としており、その中でも地上へ降下するためには不可欠であるエリクスの侵食は、最重要視されている試みとなる。これは、エリクスと特に強い結びつきのあるスターダストを人体に組み込み、スターダストに人間の体を侵食させることでエリクスの意思を人体に定着させ、人間のエリクシア化を図るというものであり、第二大気に適応できる新人類としてエリクシアはつくられることとなっている。半人ミュルミドも第二大気に適応できる人類であるが、地上のエリクスを活用するにあたって、半人ミュルミドではエリクスとの回路を繋ぐことが困難であるため、エリクシアという、よりエリクスの影響を強く受けた人類をつくる必要があった、というのがこの試みの動機となる。この研究が開始された当初、エリクスの侵食の成功率はほぼ0に近く、原初のエリクシアであるフレデリックが今もなお健康体で生きているというのは奇跡であった。研究に用いられた被験体はみなローマ研究所の研究員らの胎児たちであり、この研究自体が極秘情報とされ、ローマ研究所の人間以外でエリクスの侵食に関する詳細を知る者はいない。蒼生梁率いる研究チームは、現在このエリクスの侵食の成功率を高め、全人類にも安全に適応するものとなるよう改善を加えている。

 また、結晶エネルギーの寿命を引き延ばす算段として、結晶エネルギー縮小計画が予定されている。下位四島が所持する結晶の全てと、上位四島が所持する結晶のいくらかをバニラへと戻すことで、大元となっているバニラのエリクスにかかる負担を減らそうとするものである。これにより、下位四島の人々の上位四島への大規模な移住が行われることになり、大きな混乱が招かれると予想されているが、この、上位四島の人口が膨れ上がることで生じる様々な問題に対処する策として出されるのが地上への居住権、つまりはエリクスの侵食となる。この計画が実行されることにより、結晶エネルギーの使用は制限され利便性は失われる上、狭い土地に多くの人々が飽和状態で暮らすこととなり、空中大陸での生活を不自由と感じる者が増えることで、相対的に地上への期待値はあがり、エリクスの侵食手術を受ける人間は増えると考えられている。

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