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双子の奇跡

[750/08/30]

 

 ロンドンにおいて王位の継承は世襲制がとられており、性別に関わらず、長子が王位を継ぐこととなっている。ただ、例外として双子が生まれた場合は後に頭を出したほうの子供を長子とし、先に頭を出したほうの子供は三親等外、六親等内の親族に託され、実子として育てることが規則とされる。

 当然、継承に関わる争いをなくすための処置ではあるのだが、兄弟姉妹には適応されず、双子のみに下されるこの処置は、三度にもわたる双子による血の継承紛争が原因となっている。現在ロンドンの最高指揮権を持っているリリィ家とそれ以前のノーマン家に産まれた双子はみな悲劇的な事件と紛争を起こしてきたため、王室に産まれた双子は呪われているのだという俗話を伝承として残してしまうこととなった。そうした俗話が広まって以降、王室では今後双子が産まれても公にはせず、片方の子供を親族に託すといった形をとることを決められた。

現女王エリザベス・リリィもまた、双子の姉である。妹のアルマは六親等にあたる夫婦の元に託されたものの、まだアルマが幼児であった頃にその夫婦が病死し、他の親族らも呪いを恐れたため、元使用人であった老婆に引き取られ、彼女は王族から離れることとなった。老婆の息子夫婦は武器職人であり、彼らの武器は星歌隊員らに愛用されていた。アルマは息子夫婦を本当の両親だと信じており、いずれは彼らを継ぐ者になるのだと幼い頃から二人の仕事を手伝ってきたが、エリザベスの二十歳の戴冠式にて初めて彼女と目のあったアルマは、彼女が女王であるということ以上に、何か特別に惹かれるものを感じとる。それはエリザベスも同じであった。

 子供の頃に乳母らの話を盗み聞き、自らに双子の妹がいることを知っていたエリザベスは、戴冠式にて目の合った同じ年頃の女性のことがどうしても気になってしまい、両親や城の者たちには秘密でアルマのことを調べ、彼女が本当に自らの妹であったという確信を持つ。そしてエリザベスはアルマへと手紙を出した。自分たち姉妹がこのように離ればなれでなくてはならない理由があるのだろうかと。この手紙を受けたアルマは、王室に双子がいてはならないのなら、自分は星歌隊として彼女の傍へ行こうと決意する。いかなる呪いも伝承も、自らの作った剣でもって絶ち切ってしまえば良いのだと。こうして、現在のロンドンはリリィ家の双子2人によって統治されるに至るのであった。

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